常務の秘密が知りたくて…
 たまに常務が私に対して送る視線の意味がよくわからないときがある。普段は好意をもたれているわけでも嫌われているわけでもない、仕事をするのには適度な距離を常務はいつも保ってくれる。

 それなのにふとした瞬間、苛立ちや嫌悪感の混じったものをぶつけられ、一方的に責められている気がして堪らなくなるときがある。妹に仕送りをしていると言ったときも、さっきもそうだ。

 それが仕事のミスや不備に対してのものならわかるけど、そうじゃない。たいていはいつも私と個人的な、それこそ他愛ない会話をしているときが多い。だからその視線をぶつけられると私もどうしていいのかがわからない。

 仕事をするうえではともかく、常務は個人的には私のことをあまり好いていないのかもしれない。

 最初に敬語はいらないとか、強引に食事に誘われたりとか、そんな態度をとられたがそれは今までの秘書たちにも同じようにしてきたことなのだとしたら、やっぱり私は嫌われているのかもしれない。

 そういう結論に至ると、なんだか泣きそうになる自分がいる。

 当たり前だ、一緒に仕事をする人間にどんな理由であれ、好かれていないならショックを受けるに違いない。それでもお互いに大人だから、仕事には支障のないようにしなくてはならない。それだけなのだ。
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