常務の秘密が知りたくて…
「この三件にいつも通りの電報を頼む」
昼休みに入ったところで常務から声がかかった。折り畳まれたメモ用紙を手渡され、私はその場で中身を確認する。
社長ほどではないにしろ常務の立場から、様々な関係者の式典や結婚式などに祝電を出すことが多々ある。その際はいつもお決まりの文章と絵画がセットになっている電報を送るのが通例になっていた。
「同じ日なんですか」
「日曜日でちょうど大安だからな」
興味なさそうに返事する常務を余所に、私は真剣にメモに目を通す。同じ日だけに式場や名前などを間違えたら大変だ。結婚式なのでまだ余裕があるが、これが不幸事だと何かと慌ただしかったりする。それにしても
「常務が結婚式をするときは紹介しきれないほどの祝電が来るでしょうね」
心の中で思ったことが口に出てしまい、それに反応した常務と目が合ってしまったことに気まずさを覚える。
「そんな日が来れば、な」
「来ないんですか?」
ついつい尋ね返すと常務は渋い顔になった。
「どうだろうな、俺は結婚には向いていない」
肯定することも否定することも出来ないが、なんとなく常務の恋愛観からそれは窺える。それに
「それは女性の寝顔が苦手だからですか?」
「そんなことまで知ってんのか」
常務の口調は不快を通り越してむしろ感心したようだった。そしてそれは肯定を表している。確かに女性の寝顔が苦手というのは結婚するにおいてなかなか難しい問題だ。
「どうして苦手なんですか?」
「色々と思い出すから嫌なんだ。それに俺自身、誰かが傍にいると眠れない性質だしな」
何を思い出すのかまでは尋ねることが出来なかったけど、それを貫くほどの何かが常務にはあるんだろうか。
昼休みに入ったところで常務から声がかかった。折り畳まれたメモ用紙を手渡され、私はその場で中身を確認する。
社長ほどではないにしろ常務の立場から、様々な関係者の式典や結婚式などに祝電を出すことが多々ある。その際はいつもお決まりの文章と絵画がセットになっている電報を送るのが通例になっていた。
「同じ日なんですか」
「日曜日でちょうど大安だからな」
興味なさそうに返事する常務を余所に、私は真剣にメモに目を通す。同じ日だけに式場や名前などを間違えたら大変だ。結婚式なのでまだ余裕があるが、これが不幸事だと何かと慌ただしかったりする。それにしても
「常務が結婚式をするときは紹介しきれないほどの祝電が来るでしょうね」
心の中で思ったことが口に出てしまい、それに反応した常務と目が合ってしまったことに気まずさを覚える。
「そんな日が来れば、な」
「来ないんですか?」
ついつい尋ね返すと常務は渋い顔になった。
「どうだろうな、俺は結婚には向いていない」
肯定することも否定することも出来ないが、なんとなく常務の恋愛観からそれは窺える。それに
「それは女性の寝顔が苦手だからですか?」
「そんなことまで知ってんのか」
常務の口調は不快を通り越してむしろ感心したようだった。そしてそれは肯定を表している。確かに女性の寝顔が苦手というのは結婚するにおいてなかなか難しい問題だ。
「どうして苦手なんですか?」
「色々と思い出すから嫌なんだ。それに俺自身、誰かが傍にいると眠れない性質だしな」
何を思い出すのかまでは尋ねることが出来なかったけど、それを貫くほどの何かが常務にはあるんだろうか。