常務の秘密が知りたくて…
 翌日会社に行ってみれば昨晩の停電はサーバーのエラーで二時間後には完全に復旧したようだ。常務は昨日のことに対して何も言わないので私も何も話さなかった。というより、そんな話をする暇もなく今日も忙しかった。 

 慌しく時間が過ぎる中で常務が戻ってきたのは私が退社しようとする間際だった。折角常務の顔を見られたけど今はあまり嬉しくない。今日はずっと体調が優れなかった。ここ最近、色々と考え事をしていたせいでほとんど眠れていないからかもしれない。

 今日は極力、仕事を早めに切り上げて帰ろうと思っていたところだったが、顔を合わせたので今日の報告をするために私は常務のデスクに近付いた。

「顔色が悪いな」

 いきなり顔色の悪さを指摘されて私は慌てた。しかし常務の顔色だってお世辞にもいいとは言えない。しかめっ面なのは相変わらずだとしても、その原因は言わなくてもわかりきっている。

「例の件、どうにかなりそうですか」

「正直言って難しいな」

 手渡した資料を眺めながら常務は軽く肩を落とす。連日、先方へ交渉に赴いたり最悪の事を考えて社内で会議を行ったりと何かと動いてはいるものの、やはり状況はあまり芳しくはないようだ。

「あの、常務」

 私は躊躇いながら口を開いた。

「なんだ?」

 視線をこちらに寄越すこともなく尋ねられ、私は益々躊躇った。今この場で言うことだろうか。いや今言わなければ。

 緊張のせいか鼓動が速くてなんだかふらふらしてくる。ようやくこちらを向いた常務と目があった。その一瞬、視界が揺れたと思えば目の前は真っ白になった。
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