常務の秘密が知りたくて…
もしもこれが本物なら
『常務はどうなんですか?』
『生まれる前から覚えている』
もしもこれが本物なら。
あいつの第一印象は変な女。俺が長丘櫂として生まれる前、それよりももっと古い記憶の中であいつとの出会いだけはやけに鮮明に覚えている。
シュテルン王国――その名の通り代々シュテルン王家が統治する小さな王政国家だ。王家は民に慕われ自然溢れるこの国は平凡ながらも、皆それぞれ幸せに暮らしていた。それが崩れてきたのはつい最近の話だ。
「失礼ですが、ヒューゲル隊長ですか?」
「なんだ、お前?」
次の召集までにまだ時間がある。軍馬を部下に預けて人目つかぬ木陰で昼寝でもしようかと思っていたところに聞こえてきたのは女の声だった。
「突然申し訳ありません。私サラ王女の側近の一人、エリスと申します」
王女の名前を聞いて、俺は咄嗟に身を起こす。見れば確かに王女に謁見した際に何度か見たことがある女だ。
「王女に何かあったのか?」
「いえ。私が個人的にお話がありまして」
「王女の側近が俺に何の用があるんだ?」
部下でも必要なこと以外は話しかけようともしないこの俺に。少し睨みをきかして訊き返すと女は、エリスは背筋を正した。なんとなく今までの経験からその口から紡がれる内容は予想がついていた。
「我がシュテルン王国に仕える騎士団のヒューゲル隊長にお願い申し上げます」
彼女は改めてこちらを真っ直ぐに見据えた。
「私に剣を教えて頂けませんか?」
予想を大きく裏切ってあまりにも意外な言葉に俺はすぐに声が出なかった。
『生まれる前から覚えている』
もしもこれが本物なら。
あいつの第一印象は変な女。俺が長丘櫂として生まれる前、それよりももっと古い記憶の中であいつとの出会いだけはやけに鮮明に覚えている。
シュテルン王国――その名の通り代々シュテルン王家が統治する小さな王政国家だ。王家は民に慕われ自然溢れるこの国は平凡ながらも、皆それぞれ幸せに暮らしていた。それが崩れてきたのはつい最近の話だ。
「失礼ですが、ヒューゲル隊長ですか?」
「なんだ、お前?」
次の召集までにまだ時間がある。軍馬を部下に預けて人目つかぬ木陰で昼寝でもしようかと思っていたところに聞こえてきたのは女の声だった。
「突然申し訳ありません。私サラ王女の側近の一人、エリスと申します」
王女の名前を聞いて、俺は咄嗟に身を起こす。見れば確かに王女に謁見した際に何度か見たことがある女だ。
「王女に何かあったのか?」
「いえ。私が個人的にお話がありまして」
「王女の側近が俺に何の用があるんだ?」
部下でも必要なこと以外は話しかけようともしないこの俺に。少し睨みをきかして訊き返すと女は、エリスは背筋を正した。なんとなく今までの経験からその口から紡がれる内容は予想がついていた。
「我がシュテルン王国に仕える騎士団のヒューゲル隊長にお願い申し上げます」
彼女は改めてこちらを真っ直ぐに見据えた。
「私に剣を教えて頂けませんか?」
予想を大きく裏切ってあまりにも意外な言葉に俺はすぐに声が出なかった。