常務の秘密が知りたくて…
その顔が見たくて
今は彼女のことよりも仕事のことだ。会社に行くと彼女はいつも通り出社していた。昨日のお礼を軽く告げられたが、まだ少し体調がよくないように見える。それにどこかよそよそしかった。
しかし俺も堀田の妨害のおかげで、社内会議や外に出たりと忙しい。ようやく会社に戻ったのは終業時間を過ぎてからだったが、彼女はまだ作業をしていた。
「お疲れ様です」
「まだ残っていたのか」
そうさせている一端は自分にもあるというのに、まだ本調子ではない彼女の体調が心配だった。
「常務にお話があって待っていたんです」
「どうした?」
自分のデスクに座って伝言メモやら資料やらにざっと目を通していると彼女が近付いてきていた。
「これから堀田さんのところに行ってきます」
思いがけない発言に書類から顔を上げると無表情の彼女と目が合う。
「何?」
「何度もお誘いがあって、詳しい話を一度したいからって。お給料もあっちの方がいいし、話を聞いてみても損はないと思ったんです。もし移ることになっても引継ぎがあるならちゃんとしますから」
俺はなんて答えたらいいのかわからなかった。これではまるで移るのが前提のような話し方だ。そんなつもりはないと彼女は言っていたが、どういうつもりなのか。それを問い詰めてもいいのか。言いたいことは山ほどある、けれど
「それはお前が自分で決めたことなのか?」
「はい、私の意志です」
「そうか。ならしょうがないな。……好きにしたらいい」
そう告げると彼女の表情が揺らいだ。傷付いて泣きそうになるのを堪えているような、あのときと同じ顔だった。
しかし俺も堀田の妨害のおかげで、社内会議や外に出たりと忙しい。ようやく会社に戻ったのは終業時間を過ぎてからだったが、彼女はまだ作業をしていた。
「お疲れ様です」
「まだ残っていたのか」
そうさせている一端は自分にもあるというのに、まだ本調子ではない彼女の体調が心配だった。
「常務にお話があって待っていたんです」
「どうした?」
自分のデスクに座って伝言メモやら資料やらにざっと目を通していると彼女が近付いてきていた。
「これから堀田さんのところに行ってきます」
思いがけない発言に書類から顔を上げると無表情の彼女と目が合う。
「何?」
「何度もお誘いがあって、詳しい話を一度したいからって。お給料もあっちの方がいいし、話を聞いてみても損はないと思ったんです。もし移ることになっても引継ぎがあるならちゃんとしますから」
俺はなんて答えたらいいのかわからなかった。これではまるで移るのが前提のような話し方だ。そんなつもりはないと彼女は言っていたが、どういうつもりなのか。それを問い詰めてもいいのか。言いたいことは山ほどある、けれど
「それはお前が自分で決めたことなのか?」
「はい、私の意志です」
「そうか。ならしょうがないな。……好きにしたらいい」
そう告げると彼女の表情が揺らいだ。傷付いて泣きそうになるのを堪えているような、あのときと同じ顔だった。