リーダー・ウォーク
車に戻るとチワ丸を専用のキャリーに戻し稟も助手席へ。
確かにもうお昼の時間ではあるけれど。
なんというか、自分の立ち位置がよく分かってないのに
お昼のリクエストとかしてもいいのだろうか。
本人が聞いているのだからいいの、かな?
「決まった?」
「えっと。じゃあ、パスタ」
「ん。じゃあ、予約入れるからちょっとまって」
すぐ目の前の道路沿いにパスタのお店ありますけど?
煩わせるのが悪いと思って言ったんですけど?
そんな車混んでませんけど?
「あ、あの。そこにお店あります。よ?」
「行ったことあるのか?美味い店?」
「いえ。無いですけど」
「行って不味かったら嫌だろ?昼の時間帯だし待つのも嫌だし。
美味い店に予め予約入れておけば確実ですぐに食べられる」
「……」
徹底してるのは彼の性格なのか、セレブだからか。
食べられたらなんでも良い、安ければもっといい。
そんな食生活の稟にはよくわからない世界だ。
車は自分たちの住む街へ戻り、繁華街を抜けシックなお店の並ぶ通りへ。
物価が高そうなお店だけど大丈夫だろうか。
お水にすらお金がかかりそう。
「お待ちしておりました、松宮様。お席へ案内致します」
キラキラとまるで宝石のような照明にあっけにとられながら
お洒落なレストランへ彼は勝手にズカズカと歩いて行く。
チワ丸はお留守番として車に残し。といってももちろん、
車内にワンコを残すなんて心配なので店の従業員である
男性をひとり連れて来て車の監視をさせた。
相手も慣れているのか困った顔ひとつしていない。
「さって。飯だ飯。何がいいかな」
「私場違いじゃ」
「大丈夫だって。俺の隣に居りゃ俺の彼女ってことで誰も何も言わないよ」
「か」
彼女!?
「こんな店の客なんてのは家柄やどんだけ稼ぎがあるかで態度が全然違うような
連中ばっかりだ。あんたの格好なんか興味ねえ。
俺が松宮家の三男だって事しか意識は行ってねえよ、安心してなんでも頼んでよ」
「……大変ですね、松宮様も」
上流階級だからこその面倒。
疲れてるんだろうな、そういう人たちに囲まれて。