リーダー・ウォーク
今は少し、違って見える
やっぱり男だと聞いてむすっとしてる。肩を抱く力も強くなった。
けどここで嘘をついても意味は無いと思うから。
素直に全部話してしまったほうがいいんだろう、もうこの際。
「大江君とはずっと一緒に育ってきて。その時はまだ田舎から出る気もなかったし
きっとこれからも一緒なんだろうって勝手に思ってました」
「……」
「いつ告白とかしてくれるのかなってちょっと期待もしてたんです」
子供の頃からずっと一緒でお互いを家族ぐるみでよく知ってて、
仕事に慣れなくて辛い時も励まし合って。休日は遊びに行ったりもした。
田舎なので車に乗せてもらってとなり町で映画とかだったけれど。
ずっと女の影もなかったしそんな話も聞いてなかった。
それは敢えて作ってないって事になって、私を異性として意識してくれてる、と
思ってしまったのは単純だっただろうか?
「で。されたわけ?」
「いえ。されてないです」
だけど結局待てど暮らせどそんな甘い展開は訪れなかったわけで。
「ふぅん」
「私がもう少し積極的に行くべきなのかと思って。思い切って告白みたいなことを
しようと思って。休日に遊びに行こうって声かけたら乗ってくれて。
気合入れて待ち合わせ場所に行ったら知らない男の人と女の人が居て。
まさかのダブルデートしようって言われたんです」
「ちゃっかり女が居たってわけか」
「付き合い始めて1ヶ月目だとか言われて終始のろけっぱなしで。
彼女居るって知ってたら誘わなかったのに。
そういう話しするような関係ですらなかったのかなって。
毎日顔を合わせて他愛もない会話して飲んだり遊んだりしてても」
おまけに紹介すると言われた男はやたらベタベタ触ってくるし。
もちろん連絡先も交換しないで適当な時間に用事が出来たと帰ってきた。
それでも2人は楽しそうだったから何も言ってこなかったけれど。
そもそも2人で遊ぼうって言ったのに。
彼女が気になってそれが出来なかったのなら言えばいいのに。結局、自分は
恋愛対象でもなんでもなくただ昔から居るなじみの一人でしかなかった。
彼は何も悪くはない。期待させるような事は言ってない。やってない。
何時もそばに居てくれて笑ってくれて励ましてくれただけだ。
それを勝手に勘違いして期待してしまった私がただの勘違い女だっただけ
それがひどく惨めだっただけ。
「今もまだ未練があったりするのか」
「さあ。どうでしょう」
「あってもなくても関係ない。それに一度失敗したらからって二度目もそうとは限らないだろ」
「そうだといいなぁ」
「あんたがやたら淡白なのはそういう事か」
「自分に必ず返ってくるから努力はします。けど、人に期待はしません。
したってその通りになる保証なんてどこにもないから」
最初から希望なんか持たなければよかったんだ。
好きなことだけをまっすぐにしていれば。