リーダー・ウォーク
シグナル

メニューを読んだだけでは何の料理かさっぱり分からず、
見慣れた文字を発見し、それを頼んだ。

ほんじつのパスタセット。

これはお得な響きだと思った。相手はすぐに決めてしまったし
自分も早くオーダーを言わないとダメだと焦って内容まできちんと
観てなかった自分も悪いけれどパスタセットというのは

本日のオススメパスタとサラダにパゲット、スープがつく。

お値段、3400円。

どうしよう、財布にお金入ってるかな。

流石にこれを奢ってくれとか図々しいだろう。

「…でも1000円くらい出してくれないかな」
「なに?顔色悪いけど」
「あ。いえ。こういう場所には慣れてなくて」

パスタなんて自分で適当に作るかコンビニのしかないから。

ていうかパスタのお店じゃなくってここフレンチじゃないですか?

「にしたって緊張しすぎじゃないか?ンな食って掛かってくる訳じゃなし」
「そうなんですけどね」
「あんたはいっつも落ち着いてるのに。変な感じ」
「え?」
「俺が何を聞いても落ち着いて答えを導いてくれる。すぐ分からなくても
糸口が見つかるまで一緒に考えてくれるからさ」
「それは、私がトリマーだからですよ。ワンちゃんとその飼主さんの為のお仕事ですし」
「だったらサロンに行けばよかったのに。ペットショップって何か違うの?」

サロン。そう、普通はだいたいサロンへ就職する。

「実は卒業してすぐサロンに採用されて働いてたんです。けど」
「けど?」
「…厳しすぎて。もう来なくていいって言われちゃって」

犬を傷つけたとかではなくて、カットが悪かった訳でもない。
まともに触れることもないままに来なくていいと言われてしまった。
苦い苦い思い出。

「ふうん。大変なんだな」
< 11 / 164 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop