リーダー・ウォーク
「軽薄とか言われません?」
「何だよいきなり。今まで付き合ってきた女には言われた事ないけど?」
「……」
「怒るなよ。ちょっと世間話ししてただけだ」
「松宮様レベルになってくると世間話だけで部屋の番号とか連絡先とか交換
出来るんですね。凄いですね。詐欺師にでも転職したらいいんじゃないですか?」
「別に俺が聞いた訳じゃない。向こうから押し付けてきただけだ」
ロッジを出て大元のペンションへ戻りチワ丸と一緒にテラスで昼食。ちょっと稟が席を外し
戻って来たらチワ丸目当てなのか松宮目当てなのかわからないが女子大生くらいの若くて
可愛らしい女の子たちが何故か居てチワ丸を撫でたり松宮となにやら親しげに笑い合って
会話をしたりして楽しそうにしていた。
稟が無言で席についたら女子たちは去っていったけれど。
見たこと無いくらい爽やかな笑みとか見せちゃって。
「ふーん」
「連絡する予定もないし、部屋にも行く気はないからいいだろ」
「そうですね」
じゃあ教えなければいいじゃない。
言うってことはちょっとくらい下心があるわけでしょ。
「ちょっと可愛かったからさ、断るのも悪気がしただけだし。気にするな」
「その言葉に笑顔で頷く女なんて居るんですか?居たら頭おかしいと思う」
「そうか?ま。どうでもいい。でさ、どうする。ランにするか遊歩道行くか」
「私とチワちゃんだけで散歩する。崇央さん疲れたでしょ?部屋で寝てたら」
「そこまで疲れてないしせっかくチワ丸連れてきたのに俺も見てないと意味ないだろ」
「……」
じゃあ2人で行けばいいじゃない。私は朝早起きして眠いのに。
稟の中で不満が増えていく。イライラもしてくる。だっておにぎりはひどい目にあうし
簡単に可愛い女の子が居たら連絡先とか交換するし。
何故こんな紙より軽そうな人とお付き合いとか始めてしまったのだろうか?
軽そうに見えて実は誠実な所とか好きだと思ってたはずなのに。
「なあ稟」
「わかりました。じゃあ、ラン行きましょ。さっき可愛いチワワちゃんとポメちゃんが
連れ立って入っていくのが見えたから。仲良くなるチャンスです」
「わかった」
今更考えても仕方ない。行きましょう、と席を立つと彼もチワ丸のリードを持って
お店を出る。向かうは敷地内にあるラン。
「ねえ、崇央さん」
「ん?なに」
「もしですよ。私が貴方の目を離したすきにお兄さんと連絡先交換したら」