リーダー・ウォーク
共に歩く

長ったらしいお風呂を終えて、部屋に戻るとチワ丸はぐっすりお休み。
稟もそのままベッドに潜り込んで眠る体勢を整える。
明日は休みだ。ゆっくりここで寝かせてもらってのんびり帰ろう。

「なあ稟」
「何ですか」
「この前さ、家に何日か泊まるって話してたろ」
「そうですね」
「来週から来ないか。10日くらいさ」
「いきなりですね」
「稟にこの家の事もっと知ってほしいし。もち子の面倒も見やすいだろ」
「たしかにそうですね」

この家に居ればご飯は毎日ごちそう。チワ丸やもちの様子も見られていい。
ずっとと言われると困るけれど、10日くらいなら大丈夫だろうか。
稟は暫し考えて、彼の申し出を了承した。

「だからって、アイツの部屋にずっと居るのはナシな」
「はい」

ということで、来週から松宮家にちょっと長めの滞在決定。
1泊はしたことがあってもそれ以上はないからちょっと緊張。
でも皆さんお仕事が忙しい身の上だから、そう会うこともないだろう。
三男さんに関しては、ご機嫌でさっさと帰ってきそうだけど。

「おやすみ稟」
「おやすみなさい」

頬に軽いキスをされて、がっしりと抱きしめられての就寝。



「来週から?今日からでもいいけどね」
「い、いえ。準備とかもありますから。その、来週からお世話になります」
「はいはい。待ってますよ」

朝、朝食をとろうと移動すると上総が居たのでご挨拶。
そして来週からお邪魔することも話をしておいた。
彼は何時もと同じように柔らかく笑っていたけれど。

「あの。上総さん」
「あれ、何だか怖い顔をしているような?」
「崇央さんはワガママで俺様だけど、凄く繊細ですぐ拗ねる。優しい人なんです」
「……」
「その。あの、何が言いたいかというとっ。あの人なりに自分の生き方を
模索してるんです。だから、真面目じゃないとか、思わないでください」
「そうだろうね。彼、根は真面目な方だと思うよ。私なんかよりもよほどね」
「上総さん」
「彼のほうがよほど松宮家の当主に相応しいと思う。父もそう思っていたはず。
ただ、この家には彼の繊細さを理解してあげるほどの余裕が無かった」
「……」
「もちろん、私も含めてね。兄弟の不和すらどうにも出来ない」
「それは。その。ほら。大人になると頭固くなっちゃいますからね」
「あはは。そうかもね。すれ違ったまま、ここまで来てしまった。
でも、それを治そうとしてくれる貴方が居て。良かったと思ってるよ」
「私は」
「君とチワ丸君、そしてもちちゃん。この家もだいぶ明るくなった」

松宮家の変化を心から喜んでいるようで、ニコニコと笑う上総。

「……上総さんを癒やしてくれるような人は」
「あ。痛い所を突かれたな」
「可愛い子犬が来たらご紹介しますね」
「うん。ぜひ。大型がいいなあ」
「はい」

話が途切れた所で朝食の配膳が終わりましたと言われて。
振り返ると朝から豪華なご飯が並ぶ。
来週からはこれを暫くずっと食べられると思うと幸せ。

「楽しそうに喋ってたじゃないか」
「崇央さん。そしてチワ丸ちゃん」
「笑い合ったりして。なに、喋ったんだよ」
「ほら顔が怖い。チワちゃんも唸ってる」
「誰のせいだ」
「……私、ですね」

ただし、ちょっとした事で不機嫌になる彼氏さんと
それに合わせて歯をむき出しにして唸るチワワちゃんが厄介。
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