リーダー・ウォーク

車はまたしても繁華街を抜け高級なビルの並ぶ地区へ。

歩いている人たちもなんだか皆普段自分が見るような人と身なりが違う。

お店専用の駐車場に車をとめてチワ丸を移動用のキャリーにいれ
コッチだから、と言って先々に歩いて行く松宮。
彼がセレブであることはその辺に疎い稟でも分かっている。

セレブ犬用の豪華なお店へ連れて行ってもらって

可愛いチワ丸を一番に見せてもらって

その上まわってないお寿司って何このコース。贅沢すぎない?

「突っ立ってないで来いよ」
「は、はい」

でも相手は何も気にしてない様子でスーツ姿にキャリーを抱えてご満悦。
稟は急いで彼の元へかけより、一緒にお店ののれんをくぐる。
お寿司やさんというともっと古い歴史のありそうな店構えというイメージが
あったけれど、ここは近代的というか。お洒落で綺麗でモダン。

そして思ったよりも中は広かった。入るなり和服の女性が来て案内をしてくれる。
どうもカウンター席ではなく、個室らしい。
チワ丸をその女性に預け案内された部屋に2人で入る。

「酒は飲めねえしな。ああ。あんたが飲むってならこっちメニューあるけど」
「い、いえ。遠慮しときます…」

狭いけれど、お座敷なんて宴会の時くらいしか行かない。
ちらりとテーブルの上に乗っているメニューを見る。
お値段の所がちゃんと書いてあるのより「時価」と書いているのが
多いのはどういうことだ。

「そうか。じゃあ、一人前でいいか」
「う、梅で。この梅で」

せめて一番やすそうなやつで!

「悪いけどもう先に注文しちまった。待つの嫌いだから」
「……そ、そうですか」

松だ。この人絶対松を頼んだぞ。お茶を飲んで心を落ち着かせる稟。
お腹は空いているけれど、同時に嫌な汗もかいている。

おごり?でいいの?でもなんで私なんかにそんなしてくれるの?

「でさ。あんたに折り入って相談があるんだけど」
「はい。なんでしょう?」

どう聞こうか悩んでいると相手から切りだされた。

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