リーダー・ウォーク
チワ丸抜きで2人で話したいことってなんだろう。
私と彼を繋げるのはチワ丸ちゃんだけなのに、それが無くなったら。
一体何を話せばいいのか分からない、何をいえばいいのか。
そわそわしながらもお店に入り席に案内されて、とりあえずメニューを見る。
「俺コーヒー」
「うーん。どれも美味しそうだな。ちょっと考えさせてください」
「3分やるからじっくり考えな」
「さ、3分…」
「時間は有限だ。チワ丸車にのこしてるのにチンタラ出来るとでも?」
ただ待つの嫌いなだけじゃないんですか。
それはそうだけど、そうだけどせめて5分にしてくださいっ。
結局定番のショートケーキと紅茶のセットになりました。
パフェとか美味しそうだったけど作るのに時間がかかりそうだし。
「あの、それでお話って?」
注文も終えてやることが無くなって。あれこれと考えこむのも嫌だからと
稟は意を決して彼に尋ねる。彼がここに来た理由。
ただ稟を休ませるためじゃないんだろう、きっと何か裏があるんだ。
「そんな怖い顔して睨むなよ」
「睨んでません」
「あんた、友達居る?」
「え?ええ。田舎にですけど、何人か」
「彼氏は?」
「居ると思ってないでしょう?」
「ははは」
これは何?尋問?面接?それとも嫌がらせ?
「私は2年ほど前に上京してきたばかりの田舎者のアラサー女です。
偉そうにしてもまだ実践は1年の経験しかない下っ端トリマーです。
都会には友達は居ないし彼氏だって居ません、ついでに貧乏です。
これでいいですか?どうぞ好きなだけ笑ってください。悪趣味野郎」
どうだこんなイタイ女遊ぶ気にもならないだろ。ザマミロ。
「良かった。あんた、偉そうではあるけど孤独なタイプじゃ無さそうだから。
こっちで友達とか作ってたら面倒だと思ってたんだ。
これからも作らなくていいし彼氏も別に必要ないんだろ?」
「えっい、いえ。あの。まあ、…今すぐに必要ってワケじゃないですけど。友達くらいは」
「いいって。そんなの」
「……それってつまり、チワ丸ちゃんを優先しろって意味ですか?」
私のプライベート全部チワ丸のお世話で潰せって意味?
チワ丸は愛しいし遊ぶのは楽しいけれど、それはそれでどうなの?
「チワ丸もだけど、俺だってあんたに会うのは楽しみなんだ。
せっかく誘ったのにデートだ遊びに行くだで潰されたらムカつくだろ」
「……はあ」
やっぱりそういう意味じゃない。
「この俺が自分から誘ってやる奴なんて殆ど居ないんだからいいだろ。
それに毎日じゃないんだからさ」
「毎日だったら月給もらいます」
「あははは。そうだな、そうなったらもうあんた俺の家に来い」
「松宮様の家」
「部屋は腐るほど余ってる」
「……遠慮しときます」
結局、やっぱり私はこの人の暇つぶしのオモチャでしかないのだろうか。
金持ちの考えることは分からない。