リーダー・ウォーク

お腹いっぱいになって。ブランケットに包まって。
古くて小さいテレビをセッティングする気にもなれずゴロンと横になる。
せっかくの素敵な部屋なのに、未だ部屋にも入れずリビング。

「チワ丸ちゃんも眠いよね」

稟のお腹あたりにお尻をくっつけて眠るチワ丸。
ぽかぽかと温かい日差し。疲れと満腹と幸せな気分で。
いつの間にか一緒にお昼寝。


「すみません、私が来てしまって」
「とんでもない。こちらこそ、お時間大丈夫ですか?
私本当にいいんですよ?明日行けますし」

どれくらい寝ていたのか、突然携帯が震えて反射的に松宮だと思い
もう怒られたくないと慌てて携帯を取った。でも、相手はとても優しい声の主。
身支度を急いで整えて寝起きのチワ丸もキャリーに入れて1階へ降りる。

「そう貴方は仰るだろうから無理矢理にでも連れて行けと崇央様から言われております」
「……はは」

稟を夕方迎えに来たのは松宮ではなく、秘書。

もしかして昼間に抜けだしたせいで何か問題でも起こっているのだろうか。

「本日は崇央様がどうしても来られぬ用事が出来てしまい」
「いえいえ。とんでもないです、…私がズボラで未開人なだけなんです」
「未開人……?」
「と。とにかく。ここへ来る途中で見つけたお店でパパパパ!っと買います」
「さ。どうぞ、車へ」
「はい」

チワ丸を専用のキャリーに移ししっかりと後部座席に固定してから
稟は助手席に座る。眠って少しは回復したものの、ちょっと足腰痛い。
寝心地も正直ブランケットだけでは体が痛かったから今日のうちに買いに
行くのは正解。その上で、車で移動できるのはかなりありがたいこと。

松宮にお礼を言いたいけれど、それはまた今度にしたらいい。

「必要なものがまだまだあると聞きましたが」
「そ、そうなんですよね。あの部屋の近くにコインランドリーあるといいけど」
「あの近辺では見たことがないですね」
「…高そうですもんね」

アパートに15分100円で使える洗濯機と乾燥機があったので重宝してたのに。

やっぱり買うしかないか。洗濯機っていくら位するんだろう。

「女性は何かと物入りでしょうしね」
「男なら良かったって何時も思います。体力も違うし。美容だって」
「必要なものがあればなんなりとお手伝いをしろと言われておりますので」
「そんなにしてもらって。よっぽどチワ丸ちゃんが大事なんでしょうね」
「え?」
「私が生活苦で家に帰ったらチワ丸ちゃんが可哀想って思ってるから
こんなによくしてくれてるんですよね。まあ、憐れまれてるってのもありそうだけど」
「……」
「よし。車を貸してもらったんだし。布団と棚とかも調子に乗って買っちゃおうかな!」
「ええ。どうぞ。……崇央様はご自覚なさっているのかな」
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