リーダー・ウォーク
車の中。助手席に座り、隣は見ちゃいけないとじっとしてただ前を見ている稟。
何時もビシっと決めたスーツ姿だから彼の私服姿というのは新鮮みがある。
稟の場合は節約のためとどうせ犬の毛が付いてしまうからそこまで服に気を使って
こなかったが今日ほどそれを不味いと思ったことはない。
そんな別に気にすることもないだろう、目的はドッグランなのだから。
だけど、
こんな素敵な人の隣りに座ってまったく意識するなというのが無理なわけで。
「あんたの私服姿新鮮だな」
「あまり代わり映えしませんけどね」
「あはは。そう言うなって」
もしかして心を読まれた!?とびっくりしたが、そうでは無さそう。
無邪気に笑っている松宮に稟もつられて笑う。
チワ丸は話に加わりたそうに後ろでジタバタしている。
「ドッグランは基本的なマナーやそのお店によりルールがありますから、
まずオーナーさんかスタッフさんに話を聞くのもいいですね」
「オーナーとは先月話をしたが、そうか。ルールか」
「貸しきるならまた違うかもですが」
「大丈夫だって。貸しきって好き放題させるわけじゃない」
「遊びも躾も大事ですからね」
「ああ。もし良さそうなら俺とチワ丸の練習の成果を披露してやってもいいかな」
「え?」
何かチワ丸にしているのだろうか。そんな相談は受けていないけれど。
得意気にニヤニヤしている彼を見ているとなんだかこっちも口角が上がる。
本当に無邪気。そしてチワ丸が大事なのだろう。
「到着。見た感じ良さそうだよな」
「うわあ。目の前の土地全部ですか?牧場みたい…」
「建物の中にはプールや休憩ルームもあるらしい。そこも見学したいな」
「す、すごいワンちゃんのレジャー施設だ」
駐車場を出て少し歩いた先に一見すると高級なペンションのような建物。
その前に広がる見たこと無い広さのドッグラン。
遊ばせるためのアジリティも充実しているし、人がお泊りしても十分楽しめそう。