リーダー・ウォーク

キャリーにチワ丸をいれて歩き出す松宮に続く稟。
自然に囲まれた騒音のない穏やかな世界で遊べるなんてなんて贅沢。
人間用にもカフェがあったり休憩できる部屋などがあるというから凄い。

「松宮さん、いらっしゃい。待ってましたよ」

受付をすべく建物に入るとオーナーらしき老人が笑顔で出迎える。

「どうも。こいつがチワ丸。で、こっちが俺の秘書」
「ひ?」

秘書?

「そうですか。ようこそ。ああ、噂通りの可愛いコだ。気に入ってもらえるといいですね」
「テンションは上がってるから第一印象は悪く無さそうだ。色々と見て回っていいか?」
「はいはい。何ならスタッフをつけましょうか」
「どうする」
「えっ。…その方が、いいと思いますよ。ほら、マナーとか」
「ああ、ルールだったな。よし、じゃあ1人頼む」

いきなり話をフラレてびっくりしたけれど。
スタッフの男性が1人事務所から出てきて彼が色々と説明してくれた。
ドッグランの事、中の施設のこと、守らなければいけないルールなどなど。

見学会は30分ほどで終了。


「この雑誌にもここが取り上げられてますね。会費はちょっと高いけど、
環境の良さ、徹底したランの管理。奥さん特製のケーキの評判がいいです。
もちろん、人用もワンちゃん用もどっちも」
「どれ」
「ここ」
「……ふうん。自然も豊かで伸び伸びとわんこが遊べる素敵な空間、
オーナーもスタッフさんも人柄が良くて安心。なるほどね」

庭のテラスにある休憩ベンチに座る。稟は持ってきていた雑誌を広げ
このドッグランの口コミを松宮に見せた。
チワ丸は彼の膝におとなしく寝ていたが稟が代わりに受け取る。

「建物も綺麗だしランも定期的にメンテナンスをしているそうですよ」
「チワ丸。お前、どうすんだ。ここでいいか?お前が良いならここに決めちまうぞ」
「チワ丸ちゃんは松宮様が一緒なら何処でも楽しいですよ。ね?」

稟の膝に寝転んで気持ちよさそうになでて貰っているチワ丸。
しまいにはお腹を見せてナデナデ至福の顔。

「そうか。よし。決めた。ここにする」
「良かったねチワ丸ちゃん。…お友達は、出来そうにないけど…」
「友達なんて要らないだろ。俺が居るんだからな。ああ、あんたと」
「……」

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