リーダー・ウォーク

朝食はルームサービスでのんびりまったりと。
ゆで卵の半熟具合が神がかって最高なのと食パンが何故別物のように美味い。
感動しながらモリモリ二人分頂いた。彼はコーヒーだけでいいらしい。

でもそれじゃ駄目だから稟が無理やりトースト半分口に押し込んだ。

美味しい朝食を貪っている間に松宮はさっさとシャワーを浴び身なりを整え
仕事へ向かう準備中。その足元ではチワ丸が何かを察したようにしっぽを振って
飼い主にじゃれついている。

それは行くなと言っているのか、あるいは俺も連れて行けと言っているのか。

「今日あんた休みなんだろ。だったらチワ丸頼めないか。予定あるなら昼まででもいい」
「お預かりします。チワ丸ちゃんの爪切りもしたいし。何なら病院行って赤いの診てもらいます?」
「ああ、そうだな。時間があるなら頼めるか。これ診察券。場所はわかってるだろ」

準備万端の松宮は財布から診察券を取り出し稟のそばにおく。
そして足元に居たチワ丸を抱き上げて頭をナデナデ。

「はい。じゃあ、何か問題があれば連絡しますね。なければ大人しく待ってますから」
「わかった。じゃあ、そろそろ行くわ。支払いは済ませてるから出てってくれていい」
「……」
「何だ?おい、まだ食うのか?流石に食い過ぎじゃないか」
「お仕事大変ですね。やっぱり目指すは社長ですか?」
「はあ?そんなもの目指してないよ。上の奴が2人も居るんだから、面倒なのは全部あいつらに
やらせればいい。俺はやることだけやって貰うもの貰って定時に帰る。そんだけ」

やっぱりそう言うよね。

この感じからして上総が言うような未来は難しいと思う。

「そっか」
「何で?あんた俺の仕事に興味ないだろ」
「興味ないわけじゃないですよ。私もチョット前まではOLだったので何となく聞いてみただけです」
「あんたがOLか。…何か想像出来るな」
「どうせ田舎のへっぽこOLですよ。馬鹿にして」
「何も言ってないだろ。じゃあ、チワ丸よろしく」
「はい」

松宮が立ち上がったので稟も慌てて立ち上がり彼が抱っこしていたチワ丸を預かる。
と、即座にチワ丸が松宮を見つめて彼についていこうとするのか足をジタバタさせた。
顔も何時もと違って必死。稟がなだめようとしても聞こえていない様子。

「チワ丸。お前は男だ。我慢しろ。稟が居てくれるから、…いいこにしてろ」

置いて行かれるのが嫌だという顔をするチワ丸の頭を撫でて言い聞かせて。

「ん」

ついでに稟の唇も軽く奪って。

「今日の分はこれでいい、あんたに色々して貰うのは次にする」
「いろいろ?」
「じゃあ、悪いけど行くわ。チワ丸重いかもしれないけど頼むわ」
「大丈夫ですよ。お仕事がんばってください」
「頑張るつもりはないが、やれる範囲でやる。じゃ」
「……素直にハイって言えばいいのに」

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