リーダー・ウォーク

誘ってくれた先輩に丁寧にお断りを入れてから荷物を持って急いで裏の駐車場へ。
いつまでも松宮の車がとまっていたら仕事場の人に怪しまれるのは間違いない。
関係を隠したいわけじゃないけれど、でも堂々と言うのも厳しいというか。

「おつかれさん」
「崇央さんこそ。……って、チワ丸ちゃんは?」
「ああ。会社からちょくにこっちきたから。チワ丸は家にいる」
「じゃあこのまま家に?」

となるとこの格好はいささか緊張するのですが。

「チワ丸は井上に任せてるからちょっとくらい遅くなっても大丈夫だ」
「上総さんとか恭次さんも居ますしね」
「あれは別にいい、関係ない」
「……」

どうやら今夜はふたりきりでお食事のようだ。
また高そうなオシャレなお店に連れて行ってくれるのだろうか。
空腹だし今なら何でも食べたい気分だけど、小洒落たフレンチとかになると
文句は言えないけど後で部屋でカップラーメンをすすることになりそう。


「完全個室だからな。好きなだけ食っていいぞ」
「確かに。って。そんな普段からガツガツ食べてませんから」
「そうだっけ?ま、いいや。俺は飲めないし、適当に何か頼む」

意外にも彼が選んだのは居酒屋。チェーン店なのかは分からないけれど
若い人から年配の人まで楽しそうに笑ってお酒を飲んでいるのがちらほらと。
でもカウンターでも普通の席でもなく静かな個室を選ぶのは松宮らしいというか。

「私飲んでいいですよね?ね?ね?」
「ほう。飲むのか」
「……冗談です、飲むわけ無いですよ。あはは」

ちっ。やっぱりダメか。

席は掘りごたつになっていて足が楽。他は特に目新しい訳でもない室内。
適当にメニューをパラパラとめくり
お酒やつまみはまた今度にしておいてご飯ものを頼む。

「なあ、この前さ。上の奴が言ってたイベントあったろ。犬とか猫の」
「ああ。ワンニャン博覧会」
「……前にチケットやるって言ってたろ。ほら。これ、預かってきた」
「ありがとうございます!」

そう言って稟に手渡されたのは犬と猫の写真がプリントされたチケット。

「それ受付に出せばドッグショーとか特別席で見れるらしい」
「すごい。…嬉しいです。上総さんにお土産買わないと」
「……」
「崇央さんは会議があるんですよね。残念だけど、楽しんで来ます」
「……、この印つけた会社の服を何枚か買って欲しい」
「え?ああ。いいですよ。チワ丸ちゃんにですね」
「で。夜には家に来て」
「いいですよ」
「……」
「……、ちょっと拗ねてます?」
「別に」

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