リーダー・ウォーク
食事をして、主にワンコ関係の会話をして、部屋まで送るからと言われて車に乗る。
でも稟には違和感があった。何時もより彼が大人しい、気がする。
仕事で疲れているのだろうかとも思ったけれどそんな風には見えない。
ただなんというか、ちょっとヘン?な気がして。でも何て言おうか分からず。
「…部屋、よっていきます?」
「いや。チワ丸が待ってるから帰る」
「あ。そっか。じゃあ、また」
「ああ」
結局マンションの側まで来てしまう。やっぱり部屋には来ないようだ。
何時もなら当たり前のように部屋に上がり込むのに、
ここまで来ても何も言ってこないからそんな気がしていたけれど。
「またチワ丸ちゃんと遊びに来てくださいね」
「あ、ああ。そうだな。そうする」
「それじゃまた」
稟がシートベルトを外し外へでようとしたら。
「な、なあ」
稟の腕を掴む松宮の手。
「はい?」
「……実はさ、実は、チワ丸も泊まれるペンション予約しようと思ってるんだ」
「ああ、いいですね」
「あんたと3人でさ。だから休みに合わせて部屋取りたいんだ。教えてくれ」
「はい」
そういえばペンションを探していると言っていたっけ。ペット雑誌を眺めていたし、
ネットでも検索していた。どうやら良いのが見つかったようだ。
メインはチワ丸なんだろうけど、でも自分もちゃんと呼んでくれるのは嬉しい。
「それとその時は、俺は、…そろそろあんたに手を出したいんだが」
「……」
「……じゃ、また今度な」
無言で車を出たら相手も何か察してか追求はせず去っていった。
手を出すって別に殴り倒すとかじゃないだろう。ソウイウコトだ。
「……そ、そんな敢えて宣言しなくても」
でも言われないでいきなり来られてもたぶん困惑しただろうし最悪逃げたかもしれない。
ペンションなんてきっと歩きじゃ帰れないような遠い場所だろう。
彼氏とペンションでお泊り、そりゃそういう展開もあるかもしれないですけど。
部屋に戻り、荷物を床に適当に放り投げて。ばたんと寝転んで。
「……困ったなぁ」
ジタバタもがいて結局どうするのか結論は出なかった。
ただ、一番近いお休みを彼にメールで伝えておく。返事はそっけなく「わかった」とだけ。
それでもいい、下手に色々と書かれてしまったらもっと心臓に悪い気がするから。
「……はぁ」
もし、部屋が取れたら来週の末には出発することになる。
大丈夫、かなあ。