俺様社長の恋の罠

『本当の幸いとは一体なんだろう』


そう問うジョバンニに、ジョバンニの友人であり、光であるカンパネルラはこう答える。


『僕には分からない』


それから俺は、ずっと考えてた。幸いとは、一体なんなのかと。


未完のまま逝ってしまった彼は、本当の幸いを知っていたのだろうか。


俺ならジョバンニに、なんて答えるのだろうとその答えを探していた。


ジョバンニの幸いは、カンパネルラとどこまでも行くことだったのかもしれない。


それは叶わなくて、ジョバンニは一人で本当の幸いを探すことを誓うけど。


宮沢賢治にとっての幸いとは何だったんだろう。


未完成のこの物語を、どう紡ぐつもりだったんだろう。


それを知ることは、もうできないけれど。

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