俺様社長の恋の罠

「こ、婚約者って……ええ!?」


戸惑いの声をあげる私にニコッと笑いかけて清水さんは扉に向かって歩いていく。


「では、今日は妻の誕生日ですので。お先に失礼致します」


呆気に取られているうちに清水さんは部屋を出ていき、シーンとした部屋に私と崇人さんが残された。


「え、清水さん前にも奥様の誕生日って……」


前にもそう言って定時に帰ったことがあったはずだ。わりと最近、そうだ、あれは……。


「二回目に美月を抱いたときだな。あれは嘘だ。今回は本当だがな」


そう言われて崇人さんに目を向けると、気まずそうな顔をして髪をかきあげた。


「あの時は美月を欲望のままに抱いてしまった後悔とあいつが結婚すると聞いて、相手が美月じゃないと分かってホッとしたのと、でもあの時泣いてたのはあいつに失恋したからで美月はやっぱりあいつが好きなんだと思ったのとで。とにかく色んな感情がごちゃまぜで、清水の言ったように煮詰まっていた」


そう言って崇人さんはため息をつく。


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