俺様社長の恋の罠
それをしないなら帰ると言ってもよかった。
私は、この人が嫌いだ。私はこの人を利用しているだけだ。
この人に抱かれているときは、眞木のことを考えなくてすむから。
なのに私はそれができなくて、社長の頬にそっと触れる。
頬に触れた私の手に自分の手を重ねた社長が、嬉しそうに微笑む。
それを見てまた胸がドキドキして、私はそれをごまかすように社長の整った顔に唇を寄せる。
額に、こめかみに、瞼に、頬に。唇で触れていると変な気持ちになってくる。
こうやって私から社長に触れることはなかったから。
「美月、好きだよ」
そう言われて、唇を離した私は真っ直ぐに私を見ていた社長の瞳と目が合った。