俺様社長の恋の罠
何回もチャンスはあったはずだ。私はそのチャンスを掴もうともしなかった。
だから仕方がない。当然の結果だ。そう思う。
だけど、この感情を吐き出してしまわないと私はあいつにおめでとうを言えない。
だから、今だけ……今だけ、泣くのは今だけにするから。
「……うっ、うぅ」
止まらない涙に、自分の机に座って顔を覆う。
誰もいないここで、思う存分泣いて帰ろうと、そう思ったのに。
秘書課のドアが開き、私はビクリと身体を震わせる。
その拍子に肘がぶつかり机の上に置いてあったペン立てが床に落ちて、静かな室内にガシャンと音が響く。
入ってきたその人も、音に驚いたのだろう。ビクッと身体を強張らせているのが分かった。
神様に清水さんであることを願いつつ立ち上がるけど。