俺様社長の恋の罠

「……羽山?」


私の願望など神様は聞き入れてくれるはずもなく、入ってきたのは九条社長だった。


「まだいたのか。というか何してる、こんな暗いところで」


そう言って社長が電気をつけようとしていることに気付いて私は慌てた。


「社長、電気は、つけないでください」


私の言葉に九条はピタッと動きを止める。


「あ……もう、帰りますので」


そう言って鞄を持った私の言葉を無視して、九条社長は部屋の電気のスイッチを押した。


暗闇にいたせいか、目がくらむ。


九条社長の予想外の登場に驚いて涙は止まってるけど、きっと顔ぐちゃぐちゃだ。


私は慌てて社長に背中を向ける。こんな顔、絶対に見られたくない。


背中を向けた私に近づいてくる革靴のコツコツという足音に、心臓の音が速くなる。


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