俺様社長の恋の罠
そのまま社長室に行ってほしいなんて思うけど、まあそんなはずはなく。社長は私の真後ろで立ち止まった。
「羽山、どうして背を向ける」
どうしてって、そんなの。
失恋してここに逃げこんで泣いてたなんて、そんなの言えるわけない。
黙っている私の肩を九条社長が掴む。そのまま社長の方に向かされそうになった私は身体に力をいれて抵抗した。
「羽山」
名前を呼ばれて、抵抗する私を社長は強引に自分の方に向かせた。
顔を隠そうと下を向く私の顎に社長の手が触れて、上を向かされる。
思っていた以上に近くにあった社長の綺麗な顔を見て、自分が今どんな顔をしているのかを思い出した。
「あの、離していただけますか。もう帰りますので」
私がそう言うと社長はふっと笑った。