俺様社長の恋の罠

「その顔でか。泣いてましたって、バレバレだぞ?」


そう言われてかあっと顔が熱くなる。


恥ずかしい。よりにもよってこの人にこんなところ見られるなんて。


何も言えず社長の手を振り払う私に、社長はさらに腰を引き寄せて距離を縮めてくる。


戸惑う私に、九条社長は腹が立つくらいに綺麗な顔で笑った。


「男にでも振られたのか」


そう言われビクッと身体が震える。


しまった。これではそうですと言ってるようなものだ。


「営業一課の眞木龍一」


さらにそう言われて、私は驚きのあまり目と口を開いて社長の顔を見てしまう。


そんな私を見て、社長の顔がみるみるうちに険しくなる。


「ふうん。あいつのことで、そうやって泣いてたんだ」


そう言って社長の指が私の唇を撫でる。


「九条……社長?」


空気が変わった気がして、何だか不安になって。私は九条社長のワイシャツを掴んだ。


< 42 / 136 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop