俺様社長の恋の罠
「その顔でか。泣いてましたって、バレバレだぞ?」
そう言われてかあっと顔が熱くなる。
恥ずかしい。よりにもよってこの人にこんなところ見られるなんて。
何も言えず社長の手を振り払う私に、社長はさらに腰を引き寄せて距離を縮めてくる。
戸惑う私に、九条社長は腹が立つくらいに綺麗な顔で笑った。
「男にでも振られたのか」
そう言われビクッと身体が震える。
しまった。これではそうですと言ってるようなものだ。
「営業一課の眞木龍一」
さらにそう言われて、私は驚きのあまり目と口を開いて社長の顔を見てしまう。
そんな私を見て、社長の顔がみるみるうちに険しくなる。
「ふうん。あいつのことで、そうやって泣いてたんだ」
そう言って社長の指が私の唇を撫でる。
「九条……社長?」
空気が変わった気がして、何だか不安になって。私は九条社長のワイシャツを掴んだ。