俺様社長の恋の罠

「コーヒーを淹れましたが、どういたしますか?」


仕事の邪魔をしただろうかと不安のなってそう聞くと、少しの間があって、入れと返事があった。


「失礼します」


そう言って社長室に入ると、眉間にシワを寄せて九条社長が私を見る。


「……清水はどうした」


低い声でそう言われ、あれ?と首を傾げる。


「今日は奥さまの誕生日だそうで、もう帰られましたが。社長に許可はいただいているとおっしゃっていたのですが」


私がそう言うと、社長は何かをじっと考えこんでいる。



そろそろ煮詰まってる頃だと思うと言った清宮さんの言葉が甦った。


あの九条社長が、清宮さんに言われたことを忘れてしまうなんてよっぽどなのかもしれない。


「そろそろ煮詰まってる頃だからと、清水さんに頼まれて淹れたんですが、不要でしたかね」


何も言わない社長に気まずくなって、そう言ってコーヒーを見下ろす私に、ふっと社長が笑った気配がした。


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