俺様社長の恋の罠
「羽山、あそこのソファー見てあの時のこと思い出さなかった?」
「なっ!」
あれからそのことに触れる素振りがなかったから、なかったことにしてくれるものだと思っていたのに。
ふいうちのその言葉に私は動揺してしまう。
「眞木龍一、結婚するんだってな」
そう言われて、ハッと社長の顔を見るとなぜか社長は切なげな顔で私を見ていた。
「それで泣いてたんだ。あの時……」
そうです、と頷くこともできず私は目をそらす。これでは同意しているも同然だけど。
「……あいつと付き合ってるわけじゃなかったんだ」
そう聞かれて私は否定するために首を横に振った。
「そのようなことは一切ありません」
しょっちゅう一緒にいたから、よくそう言われたけど。本当に眞木とそういうことはなかった。
「私の片想いでした」
私がそう言うと、社長は一瞬眉を寄せてから微笑んだ。