俺様社長の恋の罠
「羽山、なぐさめてやろうか?」
こないだと同じセリフを言われて、私は社長に自分から抱きついていた。
この人に抱きしめられている間は、眞木の事を考えなくて済むから。
なぜだか私は、社長のその言葉を嬉しいと感じていた。
失恋の傷が思っている以上に深くて、誰かにすがりつきたい気持ちだったのかもしれない。
「羽山……」
社長の綺麗な顔が近付いてきたのを見て、私はハッとして慌てて社長の顔を押し返した。
「キスはなしでお願いします」
そう言うと社長はムッとした顔をするけど、キスはダメだ。
社長にキスされると、気持ちがよくて何も考えられなくなってしまって何を口走ってしまうか分からない。
そう言った私の耳元で、九条社長はかなり不満そうに了解、と呟いた。