俺様社長の恋の罠

「ダメだ、今は大したことなくても悪化するかもしれないだろ。ここで寝てろ」


そう言って社長は私の前髪をかきあげて額に触れてから立ち上がる。


口調に反してその手がすごく優しくて、また心臓がトクンと音をたてる。


「今日は比較的スケジュールが開いてるから、少し待っていろ。家まで送っていく」


そう言われて私はびっくりして起き上がる。


「え!?いいですよ、一人で帰れます」


仕事が忙しいのに、そんなことしてもらうのは申し訳なさすぎて私はそう言うけど。


九条社長はそんな私を見てため息をついて私の身体をまたソファーに押しつけてずれ落ちた社長の上着をまたかけてくれる。


「ほんとに強情だな。こういう時くらい甘えろ。とにかく送っていくから、少し寝て待ってろ」


そう言って私の頭を撫でて社長は離れていく。


キーボードを叩く音が聞こえてきて、私はハァッとため息をついた。


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