俺様社長の恋の罠
焦ってそう言う私の顔を、九条社長は覗きこんでくる。


初めて間近で見る九条社長は本当に整った顔をしていてその黒曜石のような瞳に吸い込まれそうになってしまう。


綺麗な顔に間近で顔を見られて私はドキドキしてしまう。


私の顔をじっと見ていた九条社長は眉間にシワを寄せた。


「何でもない顔には見えないな。ちょっと来い」


エレベーターが一階に着いて、私の手を掴んで社長が歩き出す。


「え、あの、社長」


戸惑った声をあげる私を無視して社長は人目のつかない場所にあるベンチに座らせた。


「ちょっとここで待ってろ」


そう言って遠ざかっていく背中を私は呆然と見送る。


一人になったら気が抜けて、また気分が悪くなってきて、思わず下を向いて口許を押さえる。


吐きそうだけど、吐くほどじゃない。いや、いっそ吐いた方がもしかして楽になるかもしれない。


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