俺様社長の恋の罠
そんなことを考えながらどうにもならない不快感に耐えていると私の前にすっとミネラルウォーターが差し出される。
はっと顔をあげると、息を切らした九条社長がいた。
私の顔を見てまた顔が険しくなる。
「少し横になれ。水にしたけど……飲めるか?」
そう言ってペットボトルの蓋を開けて、私に渡してくれる。
「あ、ありがとうございます」
ペットボトルを受け取って一口水を飲む私を、九条社長はじっと見ている。
「おいしい」
冷たい水がとてもおいしく感じて、私は思わずそう呟いた。
「今日はもう帰った方がいい。どこの課だ」
そう聞かれて、私は自分の所属する課名を答える。
「営業一課です」
そう答えると社長が何故だか驚いたように目を見開いた。
「営業……一課の、羽山?」
私の名札を見た社長が何かを考えるように腕を組んで私の顔と名札を見比べている。