俺様社長の恋の罠

「い、いえ。ほんとにご迷惑かけてすいません。もう大丈夫なので、社長もお仕事に戻ってください」


そう言う私に、社長はふっと笑う。その笑顔にドキッとするけど、顔が綺麗だからだと自分を納得させる。


「真面目だな。営業一課の課長に言っておいてやるから、ちゃんと帰れよ」


「う……、はい」


「一人で帰れ……」


途中まで何かを言いかけた社長が、遠くを見て言葉を止めた。


私も社長の視線を先を見るけど、そこには何もなくて。


「……いや。じゃあ、ちゃんと帰れよ」


そう言って社長は私に背を向けて、離れて行った。


その後、社長自ら課長に連絡してきたもんだから私は早退したんだけど。


眞木に具合悪かったのなんて気付かなかったって驚かれて、無理するなって呆れられた。


それから私は四月の人事異動で秘書課に配属になった。


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