俺様社長の恋の罠
「つ、つい。ごめんなさい」
素直に謝る私に微笑んで、社長の手が額に触れる。
「さっきより熱いな。行くぞ、歩けるか?」
きっと熱いのは熱のせいだけじゃない。そう思うけど、私はそれを隠して立ち上がる。
「一人で帰れるので、大丈夫です。社長はお仕事があるでしょうし」
そう言った私に、社長は深い深いため息をついた。
それから呆れたような顔で私を見る。
「なんで羽山はそうなんだ。定時は過ぎてる。羽山がよく寝てるから、こっちはその間に必死で仕事を終わらせたんだ。こういう時くらい甘えろ、バカ」
「バ、バカって……」
まさかそんなに寝ていたとは思わなかった。
そんな私を眉を寄せた九条社長が真剣な顔で見つめていて、それを見て私は息を呑んだ。