俺様社長の恋の罠
「いつもそうだ。悲しい時も辛い時も、お前は人のことばかりで。自分は平気だって顔してて。頼れよ、俺に甘えろよ。何のためにお前を傍に置いたと思ってる」
そう言われて、涙が出そうになって私はそれをこらえようと唇を噛んだ。
そんな私を、九条社長は抱きしめる。
「我慢するな。俺の前では、我慢しなくていい。辛かったら辛いって言えばいいんだ」
確かに、身体が怠いし、頭も痛い。
だけどこの涙はそうじゃなくて、社長の言葉が嬉しくて。そんな風に言われたのは初めてだったから。
どうしてこの人は私が傍にいて欲しい時に隣にいて、欲しい言葉を分かるんだろう。
私も知らない、私が心の奥底で求めていた温もりと言葉を与えてくれるんだろう。
「……美月」
そんな風に私の名前を呼ばないで。胸が苦しくて、また涙が溢れる。