俺様社長の恋の罠
「だけど、あの人は気付いたじゃん。その後、秘書課に異動になるし」
ほ、ほんとにどうしたんだろう。なんかお酒のピッチも早いし。
何だか様子がいつもと違って戸惑ってしまう。
「ま、眞木。ちょっと飲みすぎだよ」
そう言った私の耳に、携帯電話の振動する音が聞こえた。
眞木にも聞こえたようで、見たことがない怖い顔で私を見てる。
「ごめん、眞木」
そう言って私は怖い顔をしている眞木の傍を離れて、店の外に出てから携帯の通話ボタンを押した。
「もしもし」
『遅い』
耳に響く低い声に、笑みがもれる。本当に、この人はどうして分かるんだろう。
「私にも都合があります。それに今は業務時間外ですが?」
いつものようにそう答えると、少し間があってから九条社長は言った。
『……あいつといるの?』
「はい」
社長の質問に正直に答えると、社長は電話の向こうで深いため息をついた。