天に見えるは、月


「これまで仕事もロクに出来ない奴を何人もアシスタントにつけられて、挙句の果てに女子社員ですか」

「中村課長、そういう発言は……」

岩佐部長のほうが立場的には上なのに、逆転しているように見える。やはり最初に心配したとおりだ。

香凛は意を決して、モンドを見つめた。モンドは意図的にか、こちらを見ようとはしない。ますます、香凛は蔑視されているような気になった。

仕事が出来る人というのは、性別で仕事の出来不出来を決めるようなことはしないんじゃないだろうか。しかも“女子”社員ときた。随分と馬鹿にしている。

この人だけがそういう考えの持ち主なのか、それともこちらの考えが甘いのか。
香凛はじっとモンドを見つめたまま、たまらず口を開いた。


「……中村課長、わたしが単なる“女子社員”かどうかは仕事を見てから判断してもらえますか」

モンドはようやく香凛の方を見た。視線の冷たさはさっきよりも増しているように思える。

でも、負けるもんか。

香凛は冷たい視線に耐えながらも、モンドをじっと見つめ返した。


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