初恋ブレッド
「じゃ、月曜日」
「ありがとうございました!」
「いや、俺こそ。具合悪かったら連絡しろよ」
「え?」
「ずっと顔赤いままだから」
「もっ、もう!からかわないでくださいよっ」
「ほんとだって」

そんなこと言われたら余計に恥ずかしい。
また熱くなった気がして、肩を竦め頭を下げる。
小さく手を振って部長の車を見送った。


別れ際に渡された、名刺の裏に書かれた電話番号。
部屋に戻って登録をして、それからきゅっと握り締めた。


なんか寂しい。


宮内部長のことが頭から離れなくて、気づいたらボーッと考えてる。
洗濯をして干したカーディガンを見つめて、どうしてこんなに恋しいのか不思議に思う。

……恋しい?

他の女の人と話をしているのを見ると、モヤモヤして胸が痛くなる。
部長に会えると思うと、ウキウキして胸が痛くなる。
私のことを考えてくれるのが、見てくれるのが嬉しくて、ドキドキして胸が痛くなる。

会いたいけれど、恥ずかしい。
じゃあ、この熱は恋のせい?

もしかして、好きってこういうこと?
そしたら私、ずっとずっと好きだったの?



こんなの、相談できないよ。

宮内部長は私なんかじゃ手の届かない人。
きっと相手にしてもらえない。

この気持ちは胸の奥にしまわなきゃ。
これ以上、膨らまないように。



部長のいたベッドへ座ることもできず、膝を抱えて丸くなる。

「パンになりたいなぁ……」

喉の奥でじりじりと騒ぐ火照りに、深い深い溜め息を吐いた。


恋って、切ないのですね。
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