初恋ブレッド
コピーをとったりシュレッダーをかけたりして、午前中は終わる。

お昼休憩になったらまずはお茶汲みで使った皆のカップを片付けて。
ランチは食堂の隅っこで一人、朝焼いたパンをかじり紅茶を飲む。



ん、ちょっと生地が甘いかな。
砂糖減らそうかなぁ。

一つの生地から、ピザとコーンマヨに変身した二種類のパンをもぐもぐと噛み締めて考察。
こんなにパンが好きなら、パン屋で働けば良かったのに、と家族には言われたけれど。
所詮趣味の範囲だから、息抜きに作るのが私に合っているのだと思う。
美味しいって、食べてくれる家族の顔を見るのが幸せ。

でも最近は生産と消費の割合が合わず、勿体ないことになっているという現実。



「やっぱり砂糖減らそうかな……」

「え。田代、それ手作りなの?」

ポツリと呟き紅茶を流し込むと、ちょうど通りかかったらしい宮内部長が立ち止まった。

「……えっ!」
「まさか自分で作って持ってきてるの?」
「いえ、あっ、……はい」
「凄いなー!毎日?」
「……はい」

うわーん。
宮内部長、声が大きいです。
恥ずかしい……。

「俺パン大好きでさ。いつも美味しそうなの食べてるなぁと思ってたんだよ!手作りだったのか!」
「……っ」

あぁ、顔が熱くなってきた。
いつもって、食べてるところ見られてたのかな!?

「……しっ、失礼します!」

恥ずかしすぎる。

まともに顔見て話せない……、見なくても話せないけど。
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