君の横顔
美術準備室で待っていた長谷川先生は、この春赴任して来た若い美術教師。
すっごく美人でナイスバディなのに、いつも絵の具で汚れ放題のスモッグを着ている。
「大野くん、体調のほうはもう大丈夫なの?」
「あ、はい。一昨日はどうもすみませんでした」
「いいのいいの。元気になって良かったわ」
君もコーヒー飲む? と聞きながら、まだ返事する前に先生はコップ2つにお湯を注いだ。
すすめられたコーヒーをひと口すすっていると、長谷川先生は本題を切り出した。
「大野くんって、よく野球部の練習風景をスケッチしてるわよね」
「あ…、すみません、全然美術室に顔出さなくて。でも、もう…」
もう野球部グラウンドには行かない、と言いかけたのを遮られた。
「いいのよ、別に毎日美術部に来なくたって。何か興味引かれるものがあれば、それに集中するのもいいことだわ」
「…はい」
怒られるわけじゃないみたいだけど、なら、いったいなんの用だろう?
「大野くん、甲子園大会のポスター原画募集に、応募してみない?」
「え!?」
「今年の大会はもう済んじゃったから、来年の大会用なんだけど。それでも、〆切は結構近くてね、10月15日なの」
「来月の15日…ですか?」
「急で悪いんだけど、野球のデッサンだったら描きためてるのがいっぱいあるでしょ。それに彩色することにすれば、なんとか間に合うんじゃないかしら」