君の横顔
「お前、なんでこの学校に来たんだよ?」
冷たい水でも浴びせかけられたみたいに、全身が凍りついた。
『なんでこの学校に来たんだよ?』…って、もしかして、お前なんかに来て欲しくなかった…っていう意味なの?
頭の中で、ネガティブな考えがぐるぐる回ってる。胸が苦しくなってきた。
「歩だったら、もっと頭いい学校だって行けたはずなのに…。中学ん時、ずっとクラスでトップだったじゃん」
あ、そういうことか。ホッとして自然に頬が緩んだ。
「家から近かったから」
そう言ってニィッと笑ってみせた。
嘘はついてない。歩いて十五分で通える学校なんて、他にないもんね。…本当の理由は違うけど。
「おっまえ、そんな理由で学校決めんなよ」
友哉があきれたように肩をすくめた。
「友哉こそ、なんでこの学校にしたの? もっと野球強豪校とか行けたでしょ?」
そう問い返すと、友哉もニィッと笑ってみせた。
「俺も、家から近かったから」
そりゃそうだ、僕と友哉は小学校も同じ、ご近所さんなんだから。
「……ていうのも理由のひとつだけど、やっぱ野球部が急成長中だったのが大きいかな。専用グラウンドも去年できたし、来年の春の甲子園あたり、マジで狙えると思う」
走りながら、真剣にそう言う友哉の横顔に、僕はまた見とれていた。
とっくに知ってたよ、友哉がこの学校を受験した理由なんて。
だって僕は、友哉がこの学校にするだろうって思ったから、ここを受験したんだ。
先生や両親には猛反対されたけど「近いから」って押し切ったのは、友哉のせいなんだからね。
そんなこと、口が裂けても本人には言えないけど。
「秋の大会で、優勝したら、春の選抜に、出られるんだっけ?」
ちょっと苦しくなってきたけど、走りながら尋ねる。
「夏の大会と違って、県大会優勝だけじゃ甲子園に出れないんだ。関東大会ベストフォーくらいには残らないとな」
「へぇー、けっこう、厳しい、ん、だ」
あれっ、だんだん喋りづらくなってきた。
僕に合わせてこんなスローペースで走ってくれてるのに、まさかこれでもついて行けない?
冷たい水でも浴びせかけられたみたいに、全身が凍りついた。
『なんでこの学校に来たんだよ?』…って、もしかして、お前なんかに来て欲しくなかった…っていう意味なの?
頭の中で、ネガティブな考えがぐるぐる回ってる。胸が苦しくなってきた。
「歩だったら、もっと頭いい学校だって行けたはずなのに…。中学ん時、ずっとクラスでトップだったじゃん」
あ、そういうことか。ホッとして自然に頬が緩んだ。
「家から近かったから」
そう言ってニィッと笑ってみせた。
嘘はついてない。歩いて十五分で通える学校なんて、他にないもんね。…本当の理由は違うけど。
「おっまえ、そんな理由で学校決めんなよ」
友哉があきれたように肩をすくめた。
「友哉こそ、なんでこの学校にしたの? もっと野球強豪校とか行けたでしょ?」
そう問い返すと、友哉もニィッと笑ってみせた。
「俺も、家から近かったから」
そりゃそうだ、僕と友哉は小学校も同じ、ご近所さんなんだから。
「……ていうのも理由のひとつだけど、やっぱ野球部が急成長中だったのが大きいかな。専用グラウンドも去年できたし、来年の春の甲子園あたり、マジで狙えると思う」
走りながら、真剣にそう言う友哉の横顔に、僕はまた見とれていた。
とっくに知ってたよ、友哉がこの学校を受験した理由なんて。
だって僕は、友哉がこの学校にするだろうって思ったから、ここを受験したんだ。
先生や両親には猛反対されたけど「近いから」って押し切ったのは、友哉のせいなんだからね。
そんなこと、口が裂けても本人には言えないけど。
「秋の大会で、優勝したら、春の選抜に、出られるんだっけ?」
ちょっと苦しくなってきたけど、走りながら尋ねる。
「夏の大会と違って、県大会優勝だけじゃ甲子園に出れないんだ。関東大会ベストフォーくらいには残らないとな」
「へぇー、けっこう、厳しい、ん、だ」
あれっ、だんだん喋りづらくなってきた。
僕に合わせてこんなスローペースで走ってくれてるのに、まさかこれでもついて行けない?