君の横顔
「ごめんな…あゆみ…」
歩の寝顔に向かって、そっとつぶやく。ベッドの上の小さな手を、両手で包み込んだ。
「ぅ…んん……」
かすかに呻き声をあげて、歩が頭を左右に振った。
「歩、苦しいのか?」
目をつぶったまま、うわごとみたいに言う小さな声が聞こえた。
「ゆう、や…ごめ…ん……」
なんでお前が謝んだよ。悪いのは俺なのに。
ガチャ! 病室のドアが開く音がした。
あわてて歩の手を離す。
入って来たのは保健の青木先生だった。
「ごめんね桜川くん、付き添いまでお願いしちゃって。もうすぐ大野くんの親御さんも来られるから、もう大丈夫。桜川くんは部活に戻ってね」
「あ…」
そうだった、走り込みの途中で歩を保健室に連れてって、そのまま救急車に一緒に乗ってきちゃったんだった。
「でも…できれば歩が目覚めるまで……」
ここに居たい…って思うのと同時に、ここに居たくない、とも思った。
目を開けた時、俺なんかが側にいたら、歩はどんな顔するだろう。
俺のせいで倒れてしまったんだ。
きっと俺の顔なんか、見たくもないに違いない。
「じゃあ、俺、部活に戻ります」
先生に頭を下げて、病室のドアを開け、外に出た。
明日からはまた、そっと見守るだけの生活に戻ろう。
俺なんか関わらないほうが、歩は平穏に暮らしていけるんだ。
ずっと歩の笑顔を見ていたいけど、その笑顔が自分に向けられることがあるなんて、期待しちゃいけない。
今までどおり、あまり接点もないただのクラスメイトとして、遠くから見守っていくのがいいんだ。
どうせ秋季大会に向けて忙しくなっていくんだし……今のこの想いも、きっといつか静まる。
病院の玄関を出ると、俺は学校に向かって走り始めた。
歩の寝顔に向かって、そっとつぶやく。ベッドの上の小さな手を、両手で包み込んだ。
「ぅ…んん……」
かすかに呻き声をあげて、歩が頭を左右に振った。
「歩、苦しいのか?」
目をつぶったまま、うわごとみたいに言う小さな声が聞こえた。
「ゆう、や…ごめ…ん……」
なんでお前が謝んだよ。悪いのは俺なのに。
ガチャ! 病室のドアが開く音がした。
あわてて歩の手を離す。
入って来たのは保健の青木先生だった。
「ごめんね桜川くん、付き添いまでお願いしちゃって。もうすぐ大野くんの親御さんも来られるから、もう大丈夫。桜川くんは部活に戻ってね」
「あ…」
そうだった、走り込みの途中で歩を保健室に連れてって、そのまま救急車に一緒に乗ってきちゃったんだった。
「でも…できれば歩が目覚めるまで……」
ここに居たい…って思うのと同時に、ここに居たくない、とも思った。
目を開けた時、俺なんかが側にいたら、歩はどんな顔するだろう。
俺のせいで倒れてしまったんだ。
きっと俺の顔なんか、見たくもないに違いない。
「じゃあ、俺、部活に戻ります」
先生に頭を下げて、病室のドアを開け、外に出た。
明日からはまた、そっと見守るだけの生活に戻ろう。
俺なんか関わらないほうが、歩は平穏に暮らしていけるんだ。
ずっと歩の笑顔を見ていたいけど、その笑顔が自分に向けられることがあるなんて、期待しちゃいけない。
今までどおり、あまり接点もないただのクラスメイトとして、遠くから見守っていくのがいいんだ。
どうせ秋季大会に向けて忙しくなっていくんだし……今のこの想いも、きっといつか静まる。
病院の玄関を出ると、俺は学校に向かって走り始めた。