女神は片目を瞑る~小川まり奮闘記②~
「・・・まず最初にしなければならなかったのは、細川に近づくこと」
そこで、ヤツの特性を考えた。
あの男の得意技は何だ?尾行だ。
あいつの目的は?桑谷に仕返しすること。
元々の狙いは桑谷であって、小川まりはあくまでオマケにすぎない。
私が口を挟んだ。
「オマケで、獲物だったんですね」
それを聞いた滝本さんは眼鏡の奥で微笑んだ。
「・・・成る程、賢い女性だ」
それから続ける。
「そう、あなたは獲物だった。桑谷に屈辱と悲しみを与えるには、桑谷の愛する女性を傷つけることが有効だと細川は考えた」
桑谷さんが、呟いた。
「・・・俺は他に弱点がないからな・・・」
ハッとして私は俯く。
今の言葉でふつふつと体の底から喜びが沸き上がってくるのを気付かれないように、無表情を通した。
滝本さんの話は続く。
細川はまずうちの事務所にくることで桑谷をおびき出した。私が連絡してやって来たまだ無防備な桑谷の後をつけ、そして、郵便物や行動から今の職場が百貨店であることを知った。
その後も細川は得意の尾行で、あなたのあとをつけまわし、調べた。太郎が細川から聞きだしたところによると、君が桑谷の恋人で結婚まで間近だっていう情報は、桑谷を見つけようとデパ地下をうろついていて、販売員のお喋りが聞こえてのことだったらしい。