女神は片目を瞑る~小川まり奮闘記②~


「・・・マジで」

 恐るべし、販売員の噂話。お陰で私は監禁されてレイプされるところだったわけ??

 呆然とする私を同情的な目で見て、咳払いをし、滝本さんは続ける。

「細川はあなたをつけていて、もう一人、あなたの後を尾けている人間がいるのに気がついた」

 滝本さんが太郎さんを指差した。

「彼です。うちの事務所の依頼で、あなたのストーカーになってもらいました」

 ・・・・・・・・まったく、気付きませんでした。

 私は凹んで長いため息をついた。

 斎の事件で自分は人を見る目がないんだと思い、今回でつけられてても気付かない女なんだと思った。

 ・・・女には第6感があるって言ったの誰よ!??

 3回ほどつけさせてもらいました、と太郎さんが頭を下げる。仕方なく、私は曖昧に微笑む。

 いい気分ではないが、少なくともそのお陰で今ここに私は居るのだと、理解していた。

「細川は気付きました。そして、彼に声をかけて来たのです」

 ――――――あの女が欲しいのか、と。

 太郎さんは十分な演技をして、日にちをかけて細川の信用を得た。

 私と桑谷さんが海へ旅行をしていた夜、細川が飲んでいた男友達ってのは、太郎さんだったらしい。

 そして、ついに細川は自分の欲求を話した。

 桑谷の女をめちゃくちゃにして、あいつを苦しめたい、と―――――

「だから太郎さんから、提案したそうです」

 桑谷の家に火を放ってやれ、と。


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