女神は片目を瞑る~小川まり奮闘記②~
既に前科もちの細川は出来ないし、警察から警告を貰っている上に、万が一見つかった時に刑務所に戻るハメになるから、それは俺がやる、と言ったらしい。これで共犯になる。
お前は他所でその時間のアリバイを作れと。
火事を起こして桑谷を女から離し、その間に女を襲え、と。
そして計画は実行された。
ただし、太郎さんは実際には火をつけずに発炎筒で煙だけを出して消防車を呼び、桑谷さんを呼び出した。
「・・・で、俺は」
桑谷さんが話し出した。
「細川は俺の部屋から遠いところにいるのに放火があるのはおかしいと思って、本当の火事なのかと飛んで帰ったら、太郎さんが影から呼んでいた」
消防車がきていたずらだと判る時まで自分はここにいれないが、本人の無事の確認が必要になるはずだからあなたはここに居てくれと。
そして、自分はこれから生田刑事と共に小川さんを助けに行くから、心配するな、と。
「・・・あなたが、言うこと聞いたの?」
驚いて私が聞いた。桑谷さんの性格ではそれは出来そうにないが。
すると彼は、滝本さんを指差して、苦々しく言った。
「彼女を救いたかったらお前は邪魔だって、言ったんだ、こいつが電話で」
そして私の左腕を見る。
「・・・怪我してるけどな、君は」
私はあはははと笑った。
「細川を散々バカにしたの。意外と動きが早くて避けれなくて」
「笑い事じゃねえよ。俺がいたら、そんなことには」