女神は片目を瞑る~小川まり奮闘記②~
彼の口元の笑みが更に広がった。
「・・・畏まりました」
そして私が恐る恐るお風呂に入ってる間に(傷をお湯につけないようにかなりの努力が必要だった)、彼は美味しい晩ご飯を大量に作ってくれた。
一緒に食べて、少し名残惜しそうにしていたけど、キスだけをして、彼は荷物をまとめて自分の部屋に帰っていった。
私は一人になった自分の部屋で缶ビールを開ける。
あぐらをかいて、グラスに慎重にビールをつぎ、小さく呟いた。
「この人生に、乾杯」
そして気が済むまで、一人で飲んだ。何本も空き缶が転がっていく。にっこりと上機嫌のままで、たまにケラケラと笑いながら飲んだ。
飲んだくれて居間でそのまま毛布に包まって、朝まで寝ていた。
一人で。
くしゃみするのも、自由だった。