女神は片目を瞑る~小川まり奮闘記②~
3、あぐらをかいてプロポーズ
明けて、新年。
朝からよく晴れて寒く、キラキラと埃が光を反射して眩しさに声が出るほどだった。
足取りも軽く徒歩10分の百貨店に向かう。そして驚いた。
まだ開店までは2時間もあるというのに、もう既に百貨店の入口にはお客様の行列が出来つつあった。福袋目当ての行列らしい。
・・・・マジで!びっくりだわ~、それに、呆れた。こんな寒い日に、しかも1月の1日に、わざわざ早起きして着こんで福袋を買いにくるのが理解できない。福袋っていってみればギャンブルだと思っているからなおさらだ。
私なら、正月はゆっくりしたい。
頭をふりつつ店員通用口を入る。許可証を見せて、ロッカーまで行こうといつもの北階段を使った。
今日は時間が早いので、元々人気のないこの階段は私しかいないようだ―――――と思ったら、上から降りてくる人の足音が聞こえた。
脇に避けて、私は上がっていく。
と、その足音が止まったから、何だろうと思って顔を上げた瞬間、体がふわりと浮き上がったのを感じた。
「―――――え?」
思わず声が出た私の唇は、別の温かい唇で柔らかく塞がれる。
目を開けたままで驚いていたけど、相手が判ったと同時に体の力を抜いて瞼を閉じた。
上から降りてきたのは桑谷さんだった。
階段の踊り場の暗がりで、私を抱きしめてキスをしていた。
何か、かなり久しぶりでドキドキした。
柔らかく舌を差し入れて絡め、唇を噛んで熱を分ける。深くて情熱的な口付けを長いことしていた。