女神は片目を瞑る~小川まり奮闘記②~
「・・・・おめでとう」
やっと唇を離して、ぼそりと呟いた彼を見上げる。
私はにっこりと笑って、嬉しく言葉を返した。
「明けまして、おめでとう。・・・ビックリした」
私をストン、と降ろして、彼は子供みたいな無邪気な顔で大きく笑った。
「ずっと忙しかったし、今日も忙しいし、君を捕まえられるのはここしかないって思ってた。作戦成功だ、これで頑張れるよ」
「そうか、明日も会えないし、私は明後日から実家に戻るから・・・次は5日の夜か。5日は、仕事?」
私の問いに、頷いた。
「残念、俺は早番で仕事。その次は7日が休みだ。・・・・そうだ、俺も4日は実家に戻ってみるよ」
最後の言葉に、私は笑った。
そして時間を気にして早口で言う。
「7日、私も休みだったはず。じゃあ、その日は泊まりにきてね。話も聞かせてね」
彼は微笑して、判った、と言った。そしてぽりぽりと頬を掻いて続ける。
「・・・7日か。えらく長い禁欲生活だな。既に辛いのに、耐えられるかな、俺。つい今もスイッチ入っちゃったんだけど」
私は脱力して言った。
「体力、あるんですね・・・。こんなに忙しいのに性欲なんて湧かない。だったら今、キスなんてしなきゃよかったのに」
それとこれとは別なんだよ、と彼はカラカラ笑う。ストーカー騒動で明るいキャラが消えていたので、こんな軽い桑谷さんは久しぶりに見た。
「・・・気をつけて帰ってくれ。沖縄まで」
「はい」
そして手を振ってわかれた。