女神は片目を瞑る~小川まり奮闘記②~
飛行機は、雲の上を飛んでいた。
白い雲海が広がる外の世界を、私は小さな窓から眩しく見詰めた。
・・・・・飛んでる。
飛行機に乗ると、いつでもその度に驚くんだった。人間て、飛べるんだよね・・・。凄い生き物だ。
実家に電話して帰ることを伝えたら、いつもは元日なのにどうして今回は3日なんだ、と父親に聞かれて初めて、百貨店に転職したことを言ってなかったことに気付いた。
簡単に、サービス業なのよ、私は今、そう伝えると父は苦笑していた。
元気そうだな、まり。いつでも帰っておいで、と。
那覇空港は、混雑していた。チケットだって高い年始だ。それも当然か。
親に送ってもらったチケットで、私はいつでも悠々と帰る。私個人は貧乏だけど、両親にはお金があるのを知っている。
やはり本土よりも温かい空気を思いっきり胸の中に吸い込み、タクシーに乗り込んだ。
ここから車で2時間、沖縄本島の北部に両親の住む家がある。
私の両親は、大学教授の父と、世界を飛び回る報道カメラマンの母だ。
父の定年退職後、両親二人の希望を叶えて沖縄に移住したのだ。相変わらず母はいつでも居ないけど、父は沖縄の大学で非常勤として職を得ていた。
桑谷さんには一度も話したことがない家族の事を、私は深く愛している。だけどその割りには、何故こんなに会話に出てこないのかが謎だと自分で思うくらいに、私は両親のことを口にしない。
思うに、本当に自己で完結している人間なのだろうと思う。