女神は片目を瞑る~小川まり奮闘記②~
4、花と光と笑顔が満ちる
1月7日、朝から桑谷さんが部屋に来た。
チェーンを閉めてなかったから、鍵を二つ開ける音で目が覚める。
ふわふわの羽毛布団の中で大きく伸びをしていると、寝室のドアが開いて彼の入ってくる気配がした。
「―――――おはよう」
なんか、久しぶりに生の声を聞いた気がするなあ・・・とぼんやり考えながら、顔を半分だけ布団から出して彼を見た。
「・・・・おはよ。早いですね・・」
・・・まだ、9時じゃん。手元の時計で確認する。
桑谷さんは髪を切ったようだった。前より更に短くなっていて、爽やかよりも逞しい印象が強くなっている。
そのまま動かずにじっと私を見ているので、目を擦りながら聞いた。
「どうしたの?」
彼は立ったままで、笑って私を見ていた。ニコニコしたままで上着を脱いで、ハンガーにかけ、近寄りながら小さく言った。
「いや、やっと君を手にいれたぞ、と思って」
屈みこんでゆっくりと口付けをする。
「・・・結婚、白紙撤回だけは受け付けないぞ」
「大丈夫・・・。駄目だったらやり直せるって親にも言われたし」
にやりと笑う私の上でがくっとうな垂れて、彼が情けない声を出した。
「・・・・ドライな意見だな。何か、君の親御さんって感じだ」
私はふふふと笑った。そして布団を開けて、彼を中に入れる。
「今日は裸じゃないのか?」
私の部屋着を見て、隣に滑り込みながら彼が言う。