女神は片目を瞑る~小川まり奮闘記②~
「・・・脱がす楽しみを残しといてあげようと思ったの」
「それは」
彼がにやりと笑った。一重の目には、既に欲望が炎みたいに揺れている。
「ありがとう」
それからは、私は彼に文字通りにめちゃくちゃに乱されたので、終わったときには11時近かった。
満足気な表情で隣に寝転がる彼を見て、前置きなく言った。
「私の父は大学教授で母は報道カメラマンなの」
「――――――え?」
驚いて固まる彼に、更に言葉を続けて出した。私の個人情報一挙公開だ。
「私は一人っ子で、東京生まれのあちこち育ち。移動好きな両親のせいで引越ししまくっていた。勉強は父に、護身術は母に習った。大学生の時からここら辺でずっと一人暮らしをしている。1月23日生まれで、血液型はA型、女の親友は二人で弘美と愛子。男の親友は前に会った楠本。アクセサリーをつけるのは好きじゃない。化粧をするのは好き。果物はあまり食べないけど、野菜にはちょっとうるさい」
彼は呆然としているようだった。
頭を枕に沈めて、しばらく両目を閉じていた。じっとしている。
「他に、何か質問ある?」
私の問いかけに、ちょっと待ってと手の平を見せた。
「・・・・・秘密の女神が、いきなり現実の女に変身した」
声に笑いがこもっていた。
「秘密にしといたほうが良かった?」
「・・・いいや」
やっと目を開けて私の方を見た。大きな笑顔で、瞳はキラキラと輝いていた。